こんにちは。
今回は、優秀なEA(Expert Advisor)の見分け方についての解説記事・第2弾です。
前回記事ではバックテストレポートの基本的な見方を中心に説明しました。
本記事では、バックテストレポートをもとにより詳しい見分け方ポイントや最終的にEAで利益を出すために必要なことを解説していきます。
そもそものお話
そもそも優秀なEA(利益を出し続けるEA)はほとんどありません。
いきなり身も蓋もない話ですが、言い過ぎではないと思います。
これまで私自身も、無料のものから数十万円するようなものまでたくさんのEAを試してきましたが、勝ち続けることのできたものは1つとしてありませんでした。
相場は常に変化します。
ですから、同じ取引ロジックで勝ち続けることはできないのです。
仮に勝ち続けることができるようなEAが作れたとしても、開発者側からすれば簡単に販売や公開をしたくありません。
EAの世界は完全に売り手優位です。
EAの詳細はブラックボックスですし、悪い言い方をすれば購入者が勝とうが負けようが販売者には関係なく、売ったもん勝ちです。
結果として、ネットやSNSで販売されているようなEAは粗悪なもので溢れかえっています。
優秀なEAを見つけるためには、EAについてしっかり理解し、慎重に選定する必要があります。
まずはバックテストレポートを確認する
数少ない優秀なEAを見つけるための第一歩は、バックテストレポートを確認することです。
とはいっても、バックテストレポートだけで優秀なEAかどうかを判断するのはほぼ不可能です。
バックテストは過去のチャートデータ(ヒストリカルデータ)をもとに取引させた結果なので、完全なる後出しじゃんけんなわけです。
後出しじゃんけんなのでバックテストで良い結果を出すこと自体はそう難しくはありません。
例えば、1週間上がり続けたチャートデータがあった場合、常に買いエントリーするようなEAを作れば、その1週間の勝率は100%になります。
しかし、そんなEAでは継続して勝てるはずがありません。
また、EAの販売者は良い結果を見せて購入してもらおうと考えるので、基本的にはバックテストレポートの取引結果は良いものばかりになります。
バックテストレポートだけで優秀なEAかどうかを判断するのは難しいですが、最低限の良し悪しは判断できるので、ふるいにかけるイメージで確認をしましょう。
バックテストレポートで確認すべき項目
下記のバックテストレポートのサンプルをもとに、確認すべきポイントについて解説していきます。
①スプレッドの大きさ
スプレッドの大きさが適切に設定されているかを確認しましょう。
バックテストではスプレッドは固定値で、サンプルでは「2point」になっています。
FX口座にもよりますが、基本的に「1pips=10point」です。
スプレッドは売値(Bid)と買値(Ask)の価格差のことで、FXにおける実質的な取引コストになります。
バックテストでは何百回、何千回と取引させるため、このスプレッドの影響を大きく受けます。
小さく設定されていれば良い結果が出やすいですし、高ければ高いほど利益を出すのが難しくなります。
実際のスプレッドは取引通貨やFX口座によって異なります。
使用予定のFX口座で取引する通貨のスプレッドを確認し、それ以上の値に設定されているかを確認してください。
特に海外口座はスプレッドが大きいので注意が必要です。
また、経済指標が発表されるときや取引高が小さくなるタイミングでスプレッドが大きくなります。
なのでFX口座が公開しているスプレッドよりもできるだけ高く設定されていることが望ましいです。
②取引回数とバックテスト期間
基本的に取引回数は多いほど、EAの信頼性は高まります。
例えば、「1か月で5回の取引をして利回り10%のEA」と「1か月で100回の取引をして利回り10%のEA」であれば、後者の方が感覚的にも信頼できそうですよね。
EAと確率・統計論は密接に関わっており、統計的信頼性を上げるためには取引回数を増やすことが必要不可欠になります。
一方、バックテスト期間も長いほど良いとされています。
長ければ長いほど様々な相場で検証されたEAなので信頼できるというわけです。
しかし、私の経験上、そこまでバックテスト期間は重要ではないと考えています。
というのも相場は絶えず変化しており、10年前の相場と現在の相場は全く違いますし、今後も変わっていきます。
なので、10年前に勝てたからといって、今後勝てるとは限りません。
基本的に同じEAで何年も勝ち続けることは難しいです。
であれば、現在の相場となるべく似ている直近数年のバックテスト期間でも十分と考えられます。
それよりも重要なのが取引回数とバックテスト期間との関係です。
つまり1日何回取引するのかという取引頻度を確認してください。
例えば1日1回の取引頻度でも、私は少ないと考えています。
1日1回だと年間240回程度になりますが、この数字だと統計学的にもばらつきが大きいです。
負けが続いたときにたまたまなのか、もう勝てなくなったのかを判断するの数か月もかかってしまいます。
1日3~4回以上は欲しいところです。
③最大ドローダウンの大きさ
最大ドローダウンは、最大資産から最も大きく下落した時の損失金額が、最高証拠金の何%だったのかを表します。
つまり小さければ小さいほど優秀なEAとなります。
最終的には大きな利益を出すEAでも、途中大きなドローダウンが発生するようなEAでは継続していくことが困難です。
5%以下でないとだめとか、20%以下でも良いとか、人によって意見は様々で明確な基準はありません。
それよりも自分がどこまでドローダウンを許容できるかが大切です。
例えば100万円の証拠金でドローダウンが20%であれば、利益がマイナス20万円になるということです。
それでも耐えられるのであれば、20%でも問題ないでしょう。
バックテストレポートのグラフの見方
続いて、バックテストレポートのグラフについてです。
グラフの縦軸は「残高額」、横軸は「決済した取引の順番」なので、綺麗な右肩上がりのグラフになっていれば安定した利益を出す優秀なEAでということになります。
それ以外にも細かくグラフを見ることで、そのEAの特徴を知ることができます。
例えば、下図のグラフでは後半になると「数量」が大きくなり、「証拠金残高」も大きく増えています。
これは、証拠金残高に応じて発注数量を増やす複利運用のEAだということが推測されます。
では下図はどうでしょうか。
グラフの途中まで「証拠金残高」はきれいに右肩上がりになっています。
しかし、ところどころで髭のように「有効証拠金」が大きく下がっている箇所があり、そのタイミングで「数量」も増えています。
これは典型的なナンピン・マーチン手法が取り入れられたEAだということが推測されます。
グラフの最後には、「証拠金残高」が急激に落ちこみ、破綻したということが分かります。
このようにグラフを見るだけでもどんなEAかを把握できますので要チェックです。
グラフの注意点
グラフの見方で注意が必要なのが、横軸が時間軸ではなく決済した取引の順番になっていることです。
なのでいつどれくらいの取引をしたのかが分かりません。
バックテスト期間の前半に取引が集中し、後半はまったく取引がされていないといったことも考えられます。
時間軸を確認するには、バックテストレポートの取引履歴一覧を見る必要があります。
ただ、一見しただけでよく分かりません。
自分でエクセルなどの表計算ソフトで分析したりする必要があります。
バックテストレポート以外に確認すべき事
優秀なEAを見極めるにはバックテストレポート以外にも様々なことを確認すべきです。
ヒストリカルデータが信頼できるものか
信頼できるEAを作るには、信頼できるヒストリカルデータが必要です。
ヒストリカルデータの信頼性を示すものとして、バックテストレポートにはモデリング品質と不整合チャートエラーという項目があります。
モデリング品質は「90%」、不整合チャートは「0」になっていることが望ましいですが、そもそもどのようなヒストリカルデータなのかということは分かりません。
ヒストリカルデータは各FX業者やネットからダウンロードできますが、どのヒストリカルデータを使用するかでバックテストの結果が変わってしまいます。
例えば、米国FX業者からダウンロードしたデータでは、米国時間で日が変わるのに対し、国内のFX業者からダウンロードしたデータでは、日本時間で日が変わります。
この時、日足をもとに売買タイミングを決めているEAでは結果が大きく異なってしまいます。
上記は極端な例ですが、同じ国内のFX業者でも値が異なってきますし、場合によっては破損していたり、データが抜け落ちていたりします。
これらの対策としては複数のヒストリカルデータでバックテストを行い、同じような結果になるかを確認する方法が考えられます。
ただし、どこまで検証するかは開発者次第なので、問い合わせるしかありません。
フォワードテストをしているか
フォワードテストとは、実際にFX口座でEAを稼働し取引させることです。
バックテストが過去データを用いた後出しじゃんけんなのに対して、フォワードテストは実際の相場で取引さるのでより信頼できる結果ということになります。
また、フォワードテストではスプレッドの変動やスリッページの影響なども加味されるので、実際の利益と近い値になります。
注意点としては、フォワードテストを行うのにデモ口座かリアル口座で結果に差が出てくることです。
デモ口座では、リアル口座と異なり約定力やスリップページが発生しないため必ずしも同じ結果にはなりません。
下記にバックテスト、デモ口座、リアル口座の違いをまとめました。
バックテスト | デモ口座 | リアル口座 | |
---|---|---|---|
レート | 過去 | 現在 | 現在 |
スプレッド | 固定 | 固定 | 変動 |
スリッページ | 無し | 無し | 有り |
スワップ | 固定 | 変動 | 変動 |
約定力 | 影響なし | 影響なし | 影響あり |
一部のMT4関数 | 無視 | 動作 | 動作 |
フォワードテストの結果は公開されていないことも多いですが、EAを開発する上では必須の作業になります。
プログラミングの世界の話になりますが、バックテストとフォワードテストではEAの動き方が異なる場合があります。
そのため、バックテストではうまくいったのに、フォワードテストでは動作が止まってしまうなどバグがどうしても発生します。
結果が公開されていないとしても、フォワードテストをしているかどうかは必ず確認する必要があります。
以上、フォワードテストの必要性について述べましたが、フォワードテストの結果が良いからといって将来も勝てるわけではありません。
フォワードテストの結果も公開されてる時点で過去の結果です。
過信は禁物です。
EA開発者と連絡が取れるか
これまで述べてきた通り、バックテストレポートでは分からないことがたくさんあります。
また、実際にEAを動かしてからも、パラメータや取引ロットの調整、いつ稼働すべきかまたは停止すべきかを常に判断していく必要があります。
なのでEA開発者と連絡がとれ、いつでも質問できる状態が好ましいです。
EAで勝つためのポイント
仮に優秀なEAを見つけることができたとしても、それでけで利益を出すことはできません。
実際にEAを稼働させる環境を用意し、日々取引結果のチェックやパラメータの調整、またはEAの稼働/停止の判断などを行っていく必要があります。
最終利益を出すためのポイントを紹介します。
初期費用・運用費用を抑える
EAを稼働させるには初期費用や運用費用がかかります。
これらの費用よりもEAによる利益が上回らなければ、最終的に利益を上げることができません。
当然、初期費用と運用費用はできるだけ低く抑える必要があります。
EAを稼働させるのに必要な費用は大きく2つあり、①EAを動かす環境と②EAそのものです。
①EAを動かす環境
EAを動かす環境としては、パソコンかVPSがあります。
パソコンはなければ購入する必要がありますが、中古でもよいので安いものなら数万円で済みます。
ただし、パソコンの場合、常に起動しておく必要があるので、その分の電気代がかかります。
もう1つの方法がVPSを使用する方法です。
VPSとはVirtual Private Serverの略で、クラウド上で提供されている仮想のWindowsサーバーです。
仮想サーバー上にMT4をインストールし、EAを稼働させます。
VPSは、パソコンを常時起動する必要がなく、通信やシステムも安定しているといったメリットがありますが、月々数千円の費用が発生します。
VPSについては、下記のABLENETのVPSがおすすめです。
MT4を動かす程度であれば、1.5GBプランで十分です。
②EAそのもの
EAは自作しないのであれば、ネットやSNS等から入手する必要があります。
無料のものも多いですが、高いものでは100万円を超えるものもあります。
販売者によっては月会費をとるようのものもあります。
EAで得られるであろう利益と諸々の費用をもとに実質の利益を把握し、初期費用をどれくらいで回収できるかを計算しましょう。
1年とかかるようであればやめておいた方がよいです。
適正ロットを守る
EAでの運用を開始した当初はリスクを抑えるため低ロットにするべきです。
しかし、順調に利益が出てくると欲が出てついついロットを大きくしてしましがちです。
結果としてすべての利益を放出し破綻したという人を何人も見てきました。
私自身もその1人ですが。。。
始めに決めたロットを維持することが肝心です。
また、EAによっては推奨ロットが決められている場合もあります。
販売者・開発者に確認し、ルールに沿って運用しましょう。
運用期間はできるだけ短く勝ち逃げを狙う
私自身これまで数多くのEAを試してきましたが、1年すら持続したものはありません。
また、下記は国内EA販売サイト大手のGogoJungleで公表されているEAの稼働率ですが、多くのEAが2年以内に稼働率が大きく低下しています。
ファンドなどでEAを使って取引しているプロですら、日々パラメータの調整や改良を加えています。
なので、その辺のネットに転がってるようなEAで長く勝ち続けることはほぼ不可能です。
基本的にはEAは短命であることを念頭に、欲張らずに勝ち逃げを狙うのが鉄則です。
優秀なEAの見分け方についての解説記事・第3弾では、より詳細にバックテストレポートを分析する方法を解説していきます。
ぜひ、ご確認ください。